シンポジウム「医療専門職のキャリア開発の潮流」を開催 (平成25年11月)
ジェネラリストにこそできる問題解決とは何か
組織としてどのような医療人を育成したいのか
ポートフォリオをテーマに考える
医療専門職に対しては、どのように臨床能力の育成やキャリア開発を行なっていくべきか。「ポートフォリオ」を題材として、看護師・薬剤師・医師それぞれのシンポジストに、各専門職の現状と今後の展望についてご発表いただき、それらをふまえて組織全体での取り組みに向けてディスカッションを行いました。
当日は、文部科学省高等教育局医学教育課大学病院支援室の市村尚子専門官、慶應義塾大学病院新旧病院長ほか、院内外から132名の皆さまにご参加いただき、未来を感じるシンポジウムとなりました。
概要
●日程 :2013年11月9日(土)17:00~19:30(2.5時間)
●会場:慶應義塾大学信濃町キャンパス 北里講堂
●内容
教育講演
「キャリア開発のためのポートフォリオの活用」
大西 弘高 先生(東京大学大学院医学教育国際研究センター 専任講師)
シンポジウム
「看護師のキャリア開発支援とポートフォリオ」
加藤恵里子(慶應義塾大学病院看護部キャリア開発センター長・看護次長(教育))
「薬剤師のキャリア開発」
池谷 修 (慶應義塾大学病院薬剤部・感染制御センター 主任)
「変化はチャンスをもたらす!医学生・医師の支援から他職種に共通したキャリア開発支援へ」
福島 裕之(慶應義塾大学病院卒後臨床研修センター副センター長・医学部小児科学専任講師)
シンポジウムに先立ち、東京大学大学院医学教育国際研究センター専任講師の大西弘高先生に「キャリア開発のためのポートフォリオの活用」をテーマにご講演いただきました。ポートフォリオは様々な業界で使われている用語で、医療の業界では「教育を改善するための評価手法」として広がっています。看護部では「振り返りを促す学習ツール」として運用にとり組んでいますが、大西先生からは、指導者側のカウンセリング等の技法、指導者との関係性などもふまえて、枠組みを十分検討し、よりよいものに改良していってほしいとのメッセージをいただきました。
シンポジスト1人目の加藤は、看護職にポートフォリオの活用を定着させるためには課題が残されていると指摘しました。しかしその一方で、活用している側の者にとっては、自分の一つひとつの経験を意味づけし蓄積することにつながっており、看護職のみならず医療専門職共通のキャリア開発支援ツールとして活用できるのではないかと、期待を込めて発言しました。 続く池谷薬剤師は、薬剤師のキャリア開発については、チーム医療の推進や薬剤師の専門的業務拡大の流れの中で、看護界同様、認定薬剤師制度が確立されてきたと報告しました。それをふまえて、薬剤部でも個々の薬剤師のキャリア開発を支援しているが、支援体制を確立するところまで至ってはおらず、今後は日本薬剤師会の「ポートフォリオシステム」などを活用した支援体制を検討していくとのことでした。 次いで福島医師からは、2004年に導入された医師臨床研修制度が、自身のキャリアを思い描き、キャリア実現への道を自分で選択する貴重な機会となっており、医学生や初期研修医へのキャリア開発支援体制の礎となっている一方で、それはまだ個に依存しており、十分組織化されているとはいえないと指摘しました。「今後は、病院・医学部が、どのような医療を提供したいのか、どのような医療人を育成したいのかを明確にした上で、看護師・薬剤師・医師・全病院職員に共通したキャリア開発支援を行うことができれば、真のチーム医療の実現に寄与することにつながるのではないか、変化には一時的に苦難を伴うが、同時に長期的なチャンスももたらす!」と、熱く語っていただきました。
参加者の声
●ポートフォリオは、医療専門職のキャリア開発に活用できるのではないかという手ごたえを感じた。
●医療専門職で共通のキャリア開発支援体制を共有できれば、パートナーシップも高まり、チーム医療の推進力となるのではないかと感じた。
●どんな病院にするのか、どんな医療を提供するのかということあってこそ、初めて個人の自律と自立に基づくポートフォリオが活きてくる。今後、職種を超えた取り組みに自分も注力したい。
●取り組みを継続発展させ、日本の医療の向上に発展させて頂きたい。 ほか
今回のシンポジウムでは、看護師・薬剤師・医師のキャリア開発の現状について、相互に理解を深めることができました。さらに、参加者の多くが、共通の支援体制やツールを検討できるのではないかという期待を抱くことができ、未来につながる手応えを感じました。
最後になりましたが、教育講演をご担当くださいました大西弘高先生、シンポジストをお引き受けくださいました池谷薬剤師・福島医師・ご参加くださいました本学ならびに他施設の教職員の皆さまに心よりお礼申し上げます。(スタッフ一同)